ブサイクバカンス読書部

読んだ本の感想を書くブログです。

【感想】篠宮夕『氷川先生はオタク彼氏が欲しい。』

ひさびさの更新です。前回のサキュバスものエロマンガ(玉之けだま『僕は小さな淫魔のしもべ』)の感想を7月に投稿して以来ずーっとほったらかしにしていました。

 

あれ以来なにをやっていたのかというと……FC東京の応援をしていました。で、その様子をnoteの方にアップしたり。

 

note.com

他にもお仕事でアイドルやAV女優さんと接近したり、フィギュアのパンツをいっぱい見たりしていました。

 

そんな僕も昨今の不安な情勢下で心に隙間風を感じる日々。ふとした瞬間に「彼氏欲しいなぁ……」なんて口をついてしまったり、それを聞きつけたおっさんに抱かれたりしていました。そして刹那的な繋がりにわずかな安心を覚え依存していく。

 

とまぁ、あいかわらずゴミ以上人糞未満の生活をしていたある日、僕の飼い主になったおっさんにリモコンバイブを肛門に挿入させられたままオタクショップのラノベコーナーにいった折に目についたのが本作『氷川先生はオタク彼氏が欲しい。』でした。

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なんか高貴な雰囲気のお名前【作者紹介】

本作の作者は篠宮夕さん。「アメリカの首都って……滋賀だっけ……?」とナチュラルに口に出してしまうくらい不勉強な僕は今回初めてお名前を知りました。

 

字面だけの印象ですが、なんとも和風な気品にあふれている気がします。

 

せっかく我が家も一昨日からインターネット環境があるので、電話線を差し替えてダイヤルアップ接続し、グーグル検索してみると……。

 

まずは「篠」。これは竹の一種をあらわす言葉だそうです。しかも笹っぽい感じの。つまりパンダまっしぐらということですよ。

 

で、次なるは「宮」。これは神をまつったり、高貴な人が住む場所を意味する言葉ですよ。あとは関西以東に展開するステーキ&ハンバーグレストランの店名でもあります。

 

最後は「夕」。ただちに思い浮かぶのは夕暮れのどこか切なくなるような景色とか。あとは源氏物語の夕顔でしょうか。ちょっと美少女感あります。

 

さて、この篠宮夕さん。

 

第30回ファンタジア大賞に応募の『恋愛推奨国家の英雄譚』が金賞と審査員特別賞とバロンドールを同時受賞。

 

同作を改題した『恋愛至上都市の双騎士』にて2018年1月にデビューなさったそうです。シリーズ化され3巻まで刊行。

 

恋愛至上都市の双騎士 (ファンタジア文庫)

恋愛至上都市の双騎士 (ファンタジア文庫)

  • 作者:篠宮 夕
  • 発売日: 2018/01/20
  • メディア: 文庫
 

 

篠宮夕先生にとって第2シリーズとなるのがこの『氷川先生はオタク彼氏が欲しい。』です。期待大だね!

『氷川先生はオタク彼氏が欲しい。』ってどんな小説?【概略】

本作は「2時間目(2巻のこと)」まで出ています。が、僕はまだ1時間目しかゲット&リードをしていないので、1巻がどんな小説なのかについてご紹介いたします。

 

まぁ、ぶっちゃけタイトル通りです。表紙に優しげにこちらに向かって微笑んでいるのが氷川先生で、彼女はオタク彼氏が欲しい人なのです。で、それが主人公である、と。

 

ただ「オタク彼氏が欲しい」願望を抱いているだけならまぁそれはそれでいいのですが、彼氏になっちゃったのが自分の担当するクラスの教え子だからさぁ大変。禁断の恋がスタートしちゃってあれやこれやあるという作品です。あれやこれやの部分は買って読めばわかります。

可愛い表紙につられて手に取ってよかった!【感想】

氷川先生が可愛すぎる!!

西沢5㍉先生の表紙につられてまんまと手を取ったのですが、可愛い絵にふさわしいキャラ造形キャラ描写でした。

 

オタクが漏れ出てくるところや、嘘やごまかしが下手なところ、すねちゃうところ。そんな25歳の年上のお姉さんなんですから、好きな人にはたまらないと思います。はい! 僕好きです!

 

前半部にデートシーンがあるのですが、もうどうしようというくらい甘いシーンの連続で。僕の脳内に住んでる小さい人がスコップでバンバン砂糖をすくっては血管に直に放り込んでくるような展開。それにともない膵臓も次から次へとインスリンを分泌してしまうこと間違いなしでした。

 

このデートシーンでは氷川先生からけっこうグイグイ身を寄せてきたりするのですが、絶妙に恋愛経験ないのがばればれな感じが可愛いんですよね。恋愛鑑識がヒロインの性体験の有無を判定するときに使う化学系の粉末「処女粉」をふりかけるまでもなく男いなさそうといいますか。

 

ともかく「表紙のヒロインが可愛い。それすなわち正義」というラノベとしてもっとも重要と言っても過言ではない執筆上の要諦を見事に実現しているので、「ジャケ買いが成功する」という意味でも良質な商業作品だと思います。プロ作家が書いてるんだから当たり前に思えるかもしれませんがけっこうヤバい本とかありますよ? 『太陽系全土の♀がすべて俺に惚れていてそこそこ忙しい』ってラノベなんか全450のうち7割がイルカ型宇宙人の鳴き声ですよ? そんな本があるかどうか知らねーけど。


小説としてよくできていると思う

いや、すいません、なんか偉そうなこと言っちゃって。ほんと上から目線で。右肩に刺さったままの釘を「めんどくさいから」という理由で17年放置しているくらいダメな人間なのに上から目線でほんとうに申し訳ないですけど。

 

ただ、やはり素晴らしいと思ったんですよ。

 

本作品はラノベらしく一人称で書かれています。で、当然ながら高校生である主人公視点で物語は進むのですが、要所要所で氷川先生の一人称で進行するパートがあるんですよね。これって下手をすれば視点がガチャガチャずれて読みにくさを感じたりしかねないわけで、演出的に成功しなければ余計でしかないと思うんです。彼女のいない僕の生殖能力並みに余計なわけです。

 

しかし、氷川先生パートを読んでいると、可愛いくせに恋愛経験がなく、それでいて初めての彼が年下かつ禁断の関係であるという条件下で相手のことを想ったりする感情の機微が細やかに伝わってくるんですよね。

 

なので読み手としては

 

「ああああああーーーーーーーーーー、このふたり上手くいってええええええええええええ!!!!!! 素直になってえええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!」

 

みたいなことを強く思ってしまいます。

 

つまりこの視点切り替えをするという選択は成功していると思います。

 

また、設定が過不足なく設定されているのもうまいところ。

 

オタクという属性がたんにありがちなラノベキャラの設定として付与されているのではなく、物語上でちゃんと活かされて結末を迎えるし、氷川先生の恋愛経験がないままの25歳という設定も心情描写のなかで上手く使われている。

 

つまり小説としての「結構」がよくできている、ということなんですよね。素人の分際でこんなこというのもほんとうに身の程知らずですけど。

 

また、友達のほぼいない主人公ですが、彼もいいです。

 

まず、数少ない人間関係に助けられながら前に進んでいくという、人間関係にめぐまれている点。

 

さらに、一見すると優柔不断だったり主体性がないように評価されるかもしれない人物なのですが、高校2年生のオタクが初めての恋愛をしているとしたらなかなかにリアリティがあるんじゃないでしょうか。感情移入や共感を呼ぶとも思います。

 

主人公の人との関わりや心情を描くというのが「小説」だとするなら、ラノベとしてエンタメとして「小説」としてよくできているんだと思います。

 

要するに総合すると「良い小説」なんですよ、これ。うん。良いぞ。