ブサイクバカンス読書部

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【感想】椎月アサミ『恋愛禁止のアイドルだけど、お兄ちゃんなら恋してもいいよねっ?』

ツイッターで大量に絵描きをフォローしてると、可愛い絵、えっちな絵、逮捕したほうがいいくらいえっちな絵が24時間体制で流れてきますよね。

 

そのせいで、射精から30分もしないうちにツイート界から性的欲望が刺激され手淫がしたくなる――そんなゴミみたいな日々。

 

みなさんは送ってらっしゃらないでしょうか。

 

……そうですか……ぼくだけですか……。

 

本書『恋愛禁止のアイドルだけど、お兄ちゃんなら恋してもいいよねっ?』も、そんな二次元塗れのTL上で、イラストレーターであるシロガネヒナさんのツイートを目にしたことから購入しました。

 

そんな絵師買いシリーズ第一弾

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『恋愛禁止のアイドルだけど、お兄ちゃんなら恋してもいいよねっ?』ってどんな作品?【概略】

裏表紙のあらすじが、なかなか卓抜な要約だったので引用してみましょう。

 

夢みたいにキラキラしていて、ファンの心を惹きつけてやまない存在――アイドル。
それまで灰色だった僕の人生は、アイドルグループ『あまがみシャノワール』の美亜との出会いによって、一気に色づきはじめた。
僕が美亜の可憐な姿に惹かれ、一生応援しようと心に誓っていると、ある日、海外赴任中の母親から、家族が増えるという連絡を受ける。
そして、新しい家族との待ち合わせ場所に向かった僕が出会ったのは……なんと美亜だった! 
彼女は家庭の事情で、うちの家族になることになったらしい。
つまり、アイドルが妹になったのだ! 
そして、妹になったアイドルとの、夢のような同居生活が始まり……!? 
アイドル=妹なハートフル青春ラブコメ!

 

僕はアイドルには超絶疎いのですが、一人称で書かれているせいか、文章からも「この作者さん、実際に現場を知ってるな!」感がひしひし伝わってきます。

 

妹になる、という設定はいかにもライトノベル的ですが、作者さんが実際に見聞き体験したリアルなアイドル現場が描かれているんじゃないでしょうか。

 

名前に漢字が少ないとルー語的な読み方がしにくいよね【作者紹介】

作者の椎月アサミ先生

 

2013年に第三回講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞してデビューしたそうです。

 

「えーっとえーっと……徳川幕府の3代目将軍は……アガサ・クリスティーだっけ……?」とナチュラルに言ってしまうくらい不勉強なぼくは、本作で初めて、その存在を知りました。

 

これまでの作品はすべて講談社ラノベ文庫からリリースされてるようです。

 

以下はその一覧。

 

  • 星撃の蒼い魔剣
  • V系バンドの王子様が実は学園一の美少女お嬢様なのは秘密にしてくれ
  • カラフル――明日の君は、十二月のひまわり。

 

まだ本作しか読んだことありませんが、次に手をつけるなら『カラフル――明日の君は、十二月のひまわり。』かなぁ、と思ってます。


【ネタバレしない程度に感想】

このプロローグはすごい

主人公である蒼士が、アイドルグループ『あまがみシャノワール』のメンバーである美亜が配布していたイベント告知のフライヤーを受け取り、そのままイベントに参加する、という、『ハチミツとクローバー』の「人が恋に落ちる瞬間を、初めて見てしまった」ならぬ「人がオタになる瞬間を、初めて見てしまった」なプロローグ。

 

これはなかなかヤバいパートです。

 

アイドルとの出会い、イベントでのライブ、握手会、とアイドルが魅力を放出しまくる時間を一人称視点で描いているのですが、主人公の内部で紡がれている言葉の数々が、ともすれば「事案」になりそうな表現の連発なんですよね。


「軽やかに弾む声、薔薇色の頬、守ってあげたくなるような小さな体躯」

「ふわふわのスカートが翻り、白い太ももがやわらかく弾む」

「美亜の微笑みは、春の陽だまりのように暖かい」

 

なんてフレーズたち。

 

率直に言いますが、僕は幼い女の子を性的な目で見てしまうタイプです(とはいえノータッチを貫くべく、幼い女の子のそばでは自らの腕を切り落とすことにしています(トカゲの遺伝子を組み込んであるので生えてくるから無問題です))。

 

なので、この犯罪すれすれの目線に、

 

「うんうん、わかるわかる」

 

なんて大いに共感しました。

 

「美亜の指先は、天子の羽のように優しく、柔らかい。触れた部分から全身が浄化されるような、清らかな気持ちになる」

 

なんて表現にいたっては、共感のみならず、10代の美少女の肉体が、僕のような30代キモオタとまるで違う物質で構成されているという生物学的発見にまでいたりました。

 

こうした文字列を読み進めていると、共感ゆえにこちらの脳も、まるで麻薬を叩き込まれたかのように蕩けていってしまうんですよね。

 

このプロローグ時点で、

 

「このヤバい多幸感がこのあとも続くのではないか? 裏表紙に書かれたあらすじ的にも」

 

なんて思ったのですが……

 

事実、そのとおりになったのでした。


けっこうリアルなアイドル小説だね

本作に登場するアイドルグループ「あまがみシャノワール」は4人組アイドル。

 

他にもドルオタ仲間の女性も登場し、いちおう5人くらいは女性キャラがいるのですが、作品の8割以上が美亜の魅力と主人公との関係性を描くことに裂かれています。

 

描かれるのは、より身近で、プライベートを支えながら見るアイドルとしての美亜。

腹違いの妹であり、ぐいぐい甘えてくる妹としての美亜。

 

12歳の中学1年生でありながら、異性としての魅力を感じさせる美亜(ラッキースケベシーン有り)。

 

その三種が、混在する形で描かれてるんですよね。

 

これは、男性が女性アイドルに対して抱くリアルな感情だと思いました。

 

がんばっている姿可愛く輝く姿を純粋に推しながらも、性愛的な欲望がどこかしら存在する。

 

多くの場合は自分より年下の少女であるため、育てる意識を伴った擬似的な妹性を感じもする。

 

恋愛が禁止ということになっていて、男と繋がって欲しくはないのに、歌われる恋愛の歌。そして奥底に隠してある恋の対象になりという叶わない願い。

 

そうした欲求を満たす特権的な条件下に主人公は身をおいていて、絶妙な効果を生む設定だと思いました。

 

にもかかわらず、ドロっとした欲塗れの作品にならずに、あたたかで優しい色合いにみちているのは、主人公の性格設定の上手さにあると思いました。彼の誠実さがバランスを取っている。

 

主人公の性格設定のおかげで、まさに本書帯に書かれた「アイドル=妹!?守ってあげたくなるアイドルとの、いちゃいちゃ妹ラブコメ!」の言葉に嘘偽りのないものとなっています。

 

これならJARO・日本広告審査機構もニッコリです。

 

最後に

続巻が出て欲しいけど、どうなるんでしょうか。

 

いくつか未回収の伏線というか、作者の方は考えたんだろうけど作品には入りきらなかったであろうネタがありそうです。

 

それに4人アイドルそれぞれを描き分けているのに、物語は美亜を中心にしたものだったので、まだまだ書けることはありそうですし。

 

ラブコメとしてみんながみんな攻略対象になっても、なんだかこの主人公はふらふらと行ったり来たりしそうにないですが。

 

ここで終わってしまっても、ラストシーンに至るための話として読めばじゅうぶんな気もします。

 

とはいえ、続いて欲しいし、続けられそうでもある。

 

どちらに転んでも個人的には問題ないですが、でも、もうちょい、先の話も見てみたいかも。

 

なぁんて。

 

恋愛禁止のアイドルだけど、お兄ちゃんなら恋してもいいよねっ? (講談社ラノベ文庫)

恋愛禁止のアイドルだけど、お兄ちゃんなら恋してもいいよねっ? (講談社ラノベ文庫)