ブサイクバカンス読書部

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【感想】川岸殴魚『編集長殺し4』

さて、年末です。師走です。12月です。

 

12月という月は、ぼくの中で「1年のうち1番人を殺したくなる月」と呼ばれています。

そんな殺意に満ちたディセンバーにふさわしいのがこの小説。

 

川岸殴魚『編集長殺し4』です。

 

編集長殺しシリーズの4巻です。死(4)を象徴する、不吉な巻です。

 

魚を殴っちゃだめだよ。殴るなら釣り人にしておきなよ【作者紹介】

川岸先生のことは前回のブログ記事でもとりあげたので、先生自身の紹介はそちらをご参照ください。

yutaarai1983.hatenablog.com

『編集長殺し』ってどんな小説?【概略】

この記事は4巻を対象にしたものになります。

 

これが古くて誰もが知っているようなタイトルなら、

 

「時に西暦2015年。襲い来る謎の敵『使徒』に対抗するべく、人類は汎用人型決戦兵器『エヴァンゲリオン』を――」

 

なんて、ストーリーを言ってしまっても、

 

「あ、知ってる知ってる。おジャ魔女どれみでしょ」

 

となんら問題はないのですが。

 

本作まだまだ発売直後の作品。
内容のネタばらしをするような書いてはいけない段階です。

 

ですので、『編集長殺し』ってどんなシリーズなのか、それを紹介しましょう。

 

中学館のライトノベルレーベル「ギギギ文庫」。

このギギギ文庫編集部の面々が、基本的な登場人物となります。

 

編集者として半年目の新人川田桃香
彼女がこの作品の主人公で、一人称の視点人物。

 

その川田の右隣にデスクをおくのは岩佐彩芽さん。
川田の先輩編集者で、かなりの美貌をもちながらも、肝臓の健康になかなか問題をお持ちの方。
漢方薬をキメがちな編集者です。
ぼく的にはいちばん好きだったりします。

 

井端さくらさんは可愛い眼鏡キャラ。
外見は美少女ですが、その美少女っぷりを台無しにする言動をするオタクです。
ラノベレーベルなのでオタク的なことへのリテラシーが高い職場なわけですが、ダントツでオタクです。「ンゴンゴ」言ってますし。


浜山かんなさんも美少女です。が、見た目にまるで頓着しないタイプで、髪も着こなしもてきとうです。
同様に性格もずぼらでしょっちゅう編集部で寝ています。
でありながら担当作がときどきヒットするらしくクビにならずにいます。
編集業務に対するこだわりや愛がいちばん描かれているのも、この浜山さんな気がします。

 

星井菫さんは副編集長です。
セクシーな姿でフェロモンを発散するお姉さんで、もちろん美女です。
この副編集長、権力志向が強く、編集長の座をしっかり狙っています。

 

小山内桐葉さんは2巻の終りから登場します。
川田よりも後輩のド新人。まだ担当作を受け持つこともなく、編集者としての基礎を教わっている段階です。
大変空気の読めない、やばい思考回路の持ち主です。

 

そして編集長
外見は小さな体で金髪ツインテールの可愛い幼女なのですが、なぜか編集長という権力あるポストを手にしています。
性格は極悪そのもの。口から飛び出す言葉の9割以上はナイフのような殺傷能力を有しています。
とんでもなく自己中心的で、部下にはむちゃな要求をくりかえし、常に反対のことをいうあまのじゃくな幼女です。
彼女だけは名前が公表されておらず、人物紹介でも「編集長」とだけ書かれています。

 

以上のような個性的な編集部員たちが、幼女に理不尽に怒られ、作家が発生させる問題に右往左往し、隙間時間にちょっとした楽しみを編集部で共有したりする。
それでいて一冊を通して川田がちゃんと、先輩のアドバイスや個人の決断で編集者としてお仕事をまっとうし、ほのかに成長していく。

 

というのが基本的なお話の形式となります。

 

編集長が幼女という点をのぞけば超常現象的な要素は無く、西暦2015年に使徒が襲来しなければ、シュワちゃんも妊娠しません。


お仕事小説としての側面もあるので、出版業界の内側に興味がある方、とくに就職活動でラノベの編集部を志望している学生さんにも学ぶところが多かったり少なかったりすると思います。

 

あと、いわゆる読後感というやつなのですが。

 

どのキャラを好きになるのかにもよりますが、個人的には編集長の殺傷力高い舌鋒がくせになります。

読み終えたころにはぼく自身も影響され、自然と吐く言葉が毒々しくなり、

 

「オッケーグーグル、近場のファミレスを検索して。はやくしないとイヤホンジャックから手つっこんでカメラのレンズがたがた言わせるよ」

 

などと、つい口をついて出てしまったこともあります、ドコモショップの店頭で。

言葉を毒々しくしたい人、毒々しい言葉をありがたくいただきたい方にも非常におすすめな作品です。


これはマジ殺しもありうるんじゃない?【ネタバレしない程度に感想】

まずは表紙のおはなし

今巻をアニメショップで購入したときに、表紙を見て、まず感じたこと。

それは、

 

「おまえ誰だ!」

 

でした。

 

なんかポップでカラフルなオーラ全開の美少女がおしゃれぽいポーズをとっています。

 

これまでの表紙を振り返ると、1巻は川田のえっち気味な体操服姿、2巻は幼女編集長のサディスティックな表情と自信に満ちた立ち姿、3巻は岩佐さんの日本代表ユニと生足。

とまぁ、順番に1キャラずつ登場しているため、もちろん知ってるキャラの誰かなわけですけど……。

 

このシリーズのキャラは「美少女だけど残念」な人たちばかり。

 

なので、ここまでストレートに、非オタクな女の子たちでも「あ、カワイイ」って感じそうなイラストがくると、脳がキャラの照合をうまくおこなってくれません。

よりによってまさか、THE・オタクの井端さんとは……。

 

着ている服もサブカルかわいい感じでカラフルです。オタクな設定を逆用しておしゃれさを演出しています。

 

このカラフルオシャレ服が中央にくるためか、いちだんとポップで派手な表紙に見えますし、実際にインクもいっぱい使ってそうで、手にとったときのインクかぶれによる痒みが心配になるほどです。

 

『このライトノベルがかゆい!』の「かゆみの原因は乾燥肌だった部門」で7位くらいに入ってそうなくらいです。

 

つづいて新キャラのおはなし

今回、少しだけ登場した新人デザイナーの海老沢さん。

人物紹介には載っていませんが、イラストもしっかりついています。

 

デザイン事務所の新人であり、まだまだ先輩にいろいろとアドバイスをいただいている身。

所属組織での立場的にも、主人公の川田とおなじようなポジションです。仕事を通じてふたりはすぐに意気投合します。

 

上司もおなじくヤバイ感じの人っぽいですし、似た構造を用意することで、ネタの出しどころを増やしてきた印象です。

再度登場の予感もしますし、なんならスピンオフでデザイナーサイドがメインの作品が書けちゃいそうな気がします。

 

『デザイナー殺し』……いや、デザイナーみたいなおしゃれ職をあつかうならタイトルもおしゃれにして、『デザイナースレイヤー』。

 

なんだか普通にありそうです。

 

そして5巻へ

今巻のポイントとして、無敵の幼女への対抗策を、それぞれがひとつ持つにいたった、というのがあると思います。
そういってよければ、川田が対編集長能力の面で成長した巻でもあります。

 

また、ラストに妙に意味深な描写が出てきます。川田が編集長の様子にとある違和感を覚えます。

 

そのふたつと、今まではいまひとつ意味のわからなかった(というか内容に即してなかった)『編集長殺し』というタイトル。

ある方向にむかって、物語がおおきく動いていきそうな予感がします。

 

これは、次の5巻を楽しみにせざるをえません。

  

編集長殺し 4 (ガガガ文庫)

編集長殺し 4 (ガガガ文庫)